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遠心分離の理論
今回はスイングローターに関して、遠心力と捕捉粒子の沈降速度を導出します。
遠心力
一般に、遠心分離機の遠心力はRCFとして表されます。
プロトコル上ではRPMが使われますが、RCFとRPMの関係には線形性がないため注意が必要です。
RCFは単純で、重力加速度をg (9.8$m/s^2$)とすると以下のように定義されます。
$$RCF=\frac{g_c}{g}$$
ここで$g_c$について、角速度ω[rad/s],回転半径r[m],回転数N[rpm]のもとで
$$g_c = r\omega^2 = r(\frac{2 \pi}{60}N)^2$$
と表すことができます。
この数値をもとにRCFを具体的に計算すると
$$RCF=1118rN^2\times10^{-10}$$
となります。
この式からもRCFとRPMには線形性がないことがわかります。
試しに回転半径5cm,10000rpmまでの関係性をグラフにしてみると、以下のようになります。
沈降速度
沈降速度を求めることができれば、サンプルに対しておおよそどれくらいの時間遠心すれば良いのかがわかります。
粒子にかかる力
溶液中の粒子が完全に球形であるとすると、その粒子にかかる沈降力Fは以下のように表すことができます。
粒子直径d[cm],粒子密度ρ[g/cm],溶液密度ρ0[g/cm]において
$$F = \frac{1}{6}\pi d^3(\rho – \rho_0)r\omega^2$$
沈降方向に対する摩擦力
粒子が沈降方向とは逆向きに受ける摩擦力をfとすると、以下のように表すことができます。
粒子直径d[cm],溶液粘度η[g/cm/s],粒子の移動速度v[cm/s]において
$$f = 3\pi d \eta v$$
ここで、粒子が一定の速度で沈降すると仮定すれば、
$$\frac{1}{6}d^3(\rho – \rho_0)r\omega^2 = 3d \eta v$$
が成り立ちます。
このことから、遠心分離中の粒子の沈降速度vは
$$ v= \frac{d^2}{18}\frac{(\rho – \rho_0)}{\eta}r \omega^2$$
となります。
遠心分離の時間
上記で沈降速度を求めることができたので、そこから遠心分離の時間を求めてみます。
rについての微分方程式は
$$\frac{1}{r}\frac{dr}{dt} = \frac{d^2}{18}\frac{(\rho – \rho_0)}{\eta} \omega^2$$
であるため、現在の粒子の位置をrとし、最下部$r_{bottom}$までの沈降時間を$\Delta t$とすれば
$$\Delta t = \frac{18\eta}{d^2(\rho-\rho_0)\omega^2}ln(\frac{r_{bottom}}{r})$$
となります。